第18 回 日本木材学会論文賞(2024年度) 「近赤外ハイパースペクトラルイメージング、X線CTおよび有限要素解析を組み合わせた木材の水分移動の三次元モデリング」Journal of Wood Science、70巻9号

Zeng Wenpeng 氏(名古屋大学 大学院生命農学研究科)

藤本 高明 氏(鳥取大学 農学部)

稲垣 哲也  氏(名古屋大学 大学院生命農学研究科)

土川 覚 氏(名古屋大学 大学院生命農学研究科)

馬 特 氏(名古屋大学 大学院生命農学研究科)

論文の概要: 先行研究において、有限要素解析(FEA)法は木材中の熱・水分移動のシミュレーションに使用されてきた。しかし、木材の不均一で複雑な物理的および化学的構造に加え、シミュレーション結果を検証するための含水率分布の可視化技術が不足していることから、高品質な三次元(3D)シミュレーションを実現するには課題が残っている。本研究では、X線コンピュータ断層撮影(CT)および近赤外ハイパースペクトラルイメージング(NIR-HSI)法を組み合わせることで、FEAシミュレーションモデルを改良した。CTは木材の密度を測定するために使用され、その結果に基づいてFEA四面体メッシュを構築した。NIR-HSI法は木材内部の吸湿・脱湿時の水分分布を可視化し、この結果をFEAシミュレーションモデルのパラメータ調整およびシミュレーション結果の評価基準として利用した。それによって、シミュレーションの結果はNIR-HSI法による木材含水率の可視化結果とよく一致し、木材内部の水分の空間分布や移動傾向がより正確に再現できることが示された。さらなる研究により、含水率変化による材の割れ発生メカニズムの解明や、効率的かつ内部割れが生じない乾燥スケジュールの構築が期待される。