広帯域分光法式による革新的な木材多形質高速非破壊測定装置の開発

研究の概要
木材自給率を向上させるためには、品質・性能の確かな製品を安定的に供給できる競争力の高い製材加工体制の整備が不可欠であり、これを実現する簡易で低価格な計測装置等の開発が渇望されています。そこで、光の木材内部における吸収散乱現象に基づいた分光分析技術により木材の含水率および強度を高精度で測定しつつ、割れや節など木材表面の欠点を画像処理によって判別する高速非破壊測定装置を開発しました。この装置は、1回の走査で複数の形質を評価することができるため、製造ラインの簡略化、低コスト化を達成し、生産性の向上に寄与できます。 本プロジェクトの成果により、
1)木材の含水率と強度を高速に評価できる装置を開発しました。
 この装置は、リニアセンサ方式分光分析法と呼ばれる技術に基づいて設計されており、ベルトコンベア上を高速(120 m/min)で走行する木材の含水率および強度を、それぞれ誤差1%および1GPa未満の精度で評価できます。データ収集・解析を超高速(5 ミリ秒)で行うことが可能であるため、従来測定の難しかった短尺の材料の評価も実現しました。
2)割れや節などの木材表面の欠点を定量的に評価できる画像解析装置を開発しました。
 この装置もベルトコンベア上を高速走行する木材の割れ、欠け、節・穴などを、光切断法と呼ばれる手法によって検出します。さらに、グレイ画像の濃淡を読み取ることによって、節の数、大きさを定量的に評価できます。これによって、JASの目視等級区分に対応した評価が可能です。従来、木材の欠点評価は、熟練者による目視が一般的に行われていましたが、この装置を導入することによって自動化が実現可能となりました。
 これらの2つの計測技術を組合せ、1つのラインに組み込んだ高速非破壊測定システムを構築しました。このラインに1回通すだけで、材料の含水率、強度、表面性状を評価することができます。このシステムは、単一装置でシンプルなライン構成が可能となることから、工場の設置面積の都合上装置を導入できなかった製材工場なども含めた幅広い需要が期待されています。

国際共同研究

当研究室では以下の研究機関・研究者と共同研究を行っています。
  ■タイ・カセサート大学およびKMITL
  ■ドイツ・デュイスブルク・エッセン大学
  ■カナダ・UBCおよびUNBC
  ■フランス・フランス国立環境・農業科学技術研究所
  ■韓国・慶北大学